いらない不動産は相続放棄すべき?ケースや判断材料をお伝えします
いらない不動産は相続放棄すべきなのか、ケースや判断材料をお伝えします。
被相続人の死亡の時点から開始される相続。
相続人が遺産を受け取れる反面、遠隔地の土地・建物などの不動産は、人によっては使い道がないので、いらないといったケースもございます。いらない不動産の場合は状況に応じて、相続放棄という方法を選択することも可能です。
「こういった場合のいらない不動産は相続放棄すべき」というケースや判断材料ついて、ご説明いたします。
いらない不動産の相続放棄を検討すべきケース
いらない不動産の相続放棄を検討すべき場合はどんなケースでしょうか。
相続の対象となるものとして、現金や預貯金はもちろん、株式などの有価証券の他、土地・建物などの不動産も含まれます。
誰も住む可能性が低い、古い家屋や、利便性の悪い田舎のいらない土地を相続すると、以下のような不便が生じるかもしれません。
不動産を相続、即ち、不動産の所有者となると、いらない土地や建物だとしても、固定資産税が課税される他、維持・管理に必要なコストも発生します。
いらない不動産が建物だと、老朽化による倒壊などで近隣に被害が及ばないよう、必要最低限のメンテナンス費用もかかりますが、更地にするとなると、解体費用が相当額かかる他に、住居用土地の特例措置の対象外となってしまい、固定資産税が増額してしまう、というデメリットもございます。
いらない不動産を相続をすると、こういった面倒を抱えてしまうケースもありますので、こんな時こそ検討すべきなのが、ズバリ【相続放棄】!なのです。
相続放棄を選ぶべき判断材料とは?
相続放棄を選ぶべき判断材料とはどのようなものでしょうか。
相続放棄を選択するのであれば、いらない不動産以外の財産のみを相続して、一部の財産である不動産のみを放棄、という方法は採れません。ですので、相続財産の範囲が確定した段階でいらない不動産を相続した方がマイナスになる可能性が高い場合に相続放棄を選ぶのが無難です。
借金などのいわゆる「負の遺産」も相続財産の対象となりますので、被相続人が生前に多額の借金を抱えていて、不動産の価値よりも負担の方が大きい、といったケースが相続放棄をした方が良い場合と言えます。
いらない不動産を相続放棄する方法は?手続きフローや必要書類について
いらない不動産を相続放棄する方法はどのようにすればよいのでしょうか。手続きフローや必要書類について、以下にご案内いたします。
●1.相続放棄の期限
相続には期限の定めはありません。が、相続放棄には決断を下すまでの期限が、法律上定められています。
被相続人の死亡後、相続財産があると判った時点から、【3ヶ月以内】に家庭裁判所へ申立しなければ、相続放棄自体ができなくなってしまいます。
●2.相続放棄申述書を家庭裁判所に提出
不動産の相続放棄を決定した場合は、被相続人の住所管轄の家庭裁判所に「相続放棄申述書」という書類を作成して、その他必要書類も添付して提出する必要があります。裁判所webサイトから申述書の書式のダウンロードも可能です。
相続放棄申述書の他に必要な書類は、
- 申述人の戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票
- 被相続人
の除籍謄本の3つです。
収入印紙800円分も必要となりますので忘れずに法務局等で購入しておきましょう。
●3.裁判所からの照会書に必要事項を記入して返送
相続放棄申述書を家庭裁判所へ提出後、裁判所から相続放棄についての照会書が届きます。被相続人との続柄・相続開始の日はいつからか・既に処分した相続財産の有無、などが照会される内容となります。
●4.受理通知書が裁判所から到着
照会書を返信後、内容に問題がなければ、裁判所に相続放棄の申述が受理されたことを通知する、受理通知書が届きます。
相続放棄の手続きに何かしらの問題があって、申述が受理されなかった際には、相続放棄不受理通知書という書面が届きます。2週間以内であれば、高等裁判所へ即時抗告をすることが可能ですので、不受理に納得が行かない、という方であればこちらの手続きを取る形となります。
相続放棄の手続きにかかる期間と専門家への依頼について
相続放棄の申立から裁判所の受理まで、申述書及び照会書等の書類内容に問題がなく、滞りなく手続きが進めば、概ね1~2ヶ月程度の期間を要します。
相続放棄の期限は3ヶ月と、決して長い期間とは言えません。
相続財産の範囲の確定や、それを踏まえて相続するか放棄するかの判断もしなければならないため、多忙な方は手続きが間に合わない可能性もありますよね。
相続放棄の申立については、相続人本人のみならず、司法書士・弁護士等の専門家に代行してもらうこともできます。依頼時の費用は3~20万円程度と、やや幅がありますが、3ヶ月という重い足枷がありますので、一般的には専門家に依頼するのがオススメと言えますね。
いらない不動産の相続放棄が困難な場合の対処法
いらない不動産の相続放棄が困難な場合の対処法をご紹介します。
相続財産の一部を処分、若しくは、使用してしまった場合などは、相続を承認したと見做され、相続放棄はできなくなってしまいます。
相続放棄の判断は、被相続人の死亡の時(自身が相続人となった旨を知った時)から3ヶ月以内にしなければならない、と規定されておりますが、その3ヶ月の間に、財産を相続した方がプラスになるのかマイナスになってしまうのかを判断しなければなりません。
万が一、相続放棄の時期を逸してしまい、ご自身で住むわけでもないいらない不動産を相続すると、固定資産税や維持費・管理費など、負担だけが大きくなってしまいますよね。
そういった場合の対処法について、以下にご紹介させていただきます。
売却する
売却する方法がございます。いらない不動産でも、その建物や土地を必要とする方がいれば、売却して現金化するのがオススメです。立地条件や地域特性などによって、売れやすい・売れにくいの差はありますが、購入後、リフォームやリノベーションをして中古住宅を活用される方も増えてきていますし、建物が不要であれば買主側で解体をしてくれることも考えられます。
更地にして、資材置き場やモータプールとして活用したい、という方がいらっしゃるかもしれません。
賃貸で貸し出す
賃貸で貸し出す方法がございます。いらない不動産の建物が余程老朽化していて、修繕にコストがかかり過ぎる可能性が高いのであればあまりオススメできませんが、被相続人が生前にある程度リフォームをしていたり、そもそも築年数がそれほど経過していない住宅であれば、借家として賃貸で貸し出して、家賃収益を得る、という選択肢もございます。
賃借人が入居中は、建物や設備の維持・修繕費用負担義務は貸主側に生じますので、遠方にお住まいでご自身で賃貸管理が困難という場合は、いらない不動産の所在地の地域の、不動産管理会社に管理を委託するのも一案です。
土地であれば月極駐車場などで賃貸運用する、という方法あります。
寄付
寄付する方法がございます。治体や町内会、近隣の土地所有者などへの寄付をする場合もございます。
売るにしても貸すにしても、いらない不動産に一定以上の価値がなければ成り立ちませんので、不動産としての資産価値が明らかに乏しい、という状況であれば、自治体などへ寄付の相談をしてみるのも良いでしょう。
場合によっては、契約書作成などの手続きや税務に関しての注意点もござますので、弁護士や税理士、司法書士などの専門家にも相談されることをおすすめします。
知っておきたい不動産相続のトラブル事例
知っておきたい不動産相続のトラブル事例をご紹介します。
相続人が複数人の場合、遺産をどのように分割するかの協議をしますが、不動産が相続財産に含まれていると、以下のようなトラブルに遭遇する可能性がございます。
・不動産の価値が将来値上がる可能性があるため、不動産を相続しない相続人が、現在の価値に対しての現金だけでは足りない・納得しないというトラブル
・不動産を相続した相続人が、当該不動産で相続後に賃貸経営をはじめて、家賃収入を得ることに対して他の相続人が不満を持つ、といったケース
・売却せずに相続した不動産を住居として利用したい者と、売却して現金化したあとに相続人間で分割して相続をしたい者と、相続人間で意見が割れてしまう、といったトラブル
不動産は、物理的に分割ができないため、相続人が複数だと、トラブルや揉め事の火種になりやすい、という側面があります。
被相続人の遺言書で、明確に相続の内容が記されている場合や、被相続人が死亡前に生前贈与や別の方法で不動産を処分しているといった場合であれば、こういったトラブルは多少回避しやすいかもしれませんが、相続人が多ければ多いほど、意見も様々となります。
遺産分割協議で相続人同士の話し合いをして、相続の内容を確定するというのが通常の流れですが、可能であれば、相続前にある程度のトラブルを想定した上で、対策を練っておくのも大事ですね。
いらない不動産を相続放棄する際は専門家に相談がおすすめ
いらない不動産を相続放棄する際は専門家に相談することをおすすめします。
相続放棄は申立の期限が3ヶ月と短いですが、その間に、不動産を相続した方がプラス・マイナスどちらになるかを判断しなければなりません。書類手続きなど手間も多いため、忙しい方は司法書士・弁護士等の専門家に頼むのが手堅い方法です。
ただし、相続放棄前に財産の一部を使用したり処分してしまっている場合は相続放棄ができなくなります。どうしても相続放棄ができなかった、という場合であれば、相続した不動産の売却や、賃貸での運用、自治体等への寄付などの方法も視野に入れましょう。
不動産は価値の分割が難しいため、相続人が多い場合はトラブルや揉め事が発生しやすいという実情もございます。遺産分割協議でも意見がまとまらない可能性も十分有りえますので、できれば被相続人が生前の時点である程度の対策を講じておくのが理想的、と言えるでしょう。