いらない土地を国に返すには?相続土地国庫帰属制度について解説します

2024年1月26日

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いらない土地を国に返す方法「相続土地国庫帰属制度」とは?

いらない土地を国に返す「相続土地国庫帰属制度」をご存知でしょうか。

両親からいらない土地を相続したけれども、そのまま相続登記せずに放置されている土地が増加しています 。相続登記しないと、今後の所有者が誰なのかわからなくなる恐れがあり、不動産の取引や市街地の開発、防災対策などの妨げとなります。いらない土地の増加は、現在の日本において大きな課題です。

これまでは、いらない土地を手放すには相続放棄するしかなく、資産価値のある不動産もあわせて手放す必要がありました。

そこで、所有者がわからなくなった、いらない土地が増えるのを防ぐために、令和5年4月27日に国が創設したのが「相続土地国庫帰属制度」です。この制度は、相続または遺贈したいらない土地を所有する権利を国に返す制度となります。「相続したけどいらないから困っている」という方は、是非知っておきたい制度ですね。

いらない土地を国に返す制度「相続土地国庫帰属制度」を利用することで、以下のメリットがあります。

【国に返すメリット】

  • 引受先を探す手間と費用が抑えられる
  • 国に所有権を返すことで、何かトラブルがあっても国が対処してくれる

この記事では、相続土地国庫帰属制度を利用するための要件や、利用できない場合にいらない土地を手放す方法について解説します。

土地や建物を国に寄付できる新制度ではありません【注意点】

いらない 土地 国 に 返す 注意

相続土地国庫帰属制度のことを「いらない土地や建物を国に寄付できる新制度」と解釈している人がいますが、これは間違いです。

後述しますが、建物を引き取ってくれません。建物(空き家)があるいらない土地については、そもそも相続土地国庫帰属制度を利用するための要件に当てはまらないのです。

また、「国が審査したうえで引き取る」という観点からいうと、そもそも寄付の意味合いとは異なります。「国に返す」ことと「国に寄付する」ことはイコールではないことがおわかりいただけると思います。

この制度は「国に返す」制度ですので、ご注意ください。

相続土地国庫帰属制度にはさまざまな要件があり難しく感じられますが、いらない土地を相続した人にとっては、国に返すという点で信頼できる制度といえるでしょう。

相続土地国庫帰属制度が利用できる人や土地について

相続土地国庫帰属制度を利用し、国にいらない土地を返すには、一定の要件をすべて満たしている必要があります。

要件を満たしていなければ、制度を利用していらない土地を国に返すことはできません。「相続したけどいらないから制度を利用したい」場合には、まずは要件に合うかどうかを確認しましょう。

具体的に細かい要件が設定されていますので、事前に確認したうえで申請の準備に取り掛からないと、時間や労力が無駄になってしまいます。

ここからは、どのような人が利用できるのか、国に返すことができるのはどのような土地か、返す際、国に支払う負担金額などについて具体的に解説します。

利用できる人(申請者)

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いらない土地を国に返すための申請ができるのは、相続や遺贈(遺言による贈与)でいらない土地を得た相続人です。

令和5年4月27日より前に相続した場合でも手続きは可能です。

また、共有持分を持つ複数の共有者についても、共有者全員が共同で申請していれば、相続土地国庫帰属制度の利用が可能です。

なお、相続や遺贈以外で土地を得た人(または相続人ではない人)は、この制度を利用することはできません。例えば、生前贈与や不動産売買でいらない土地を取得した人や法人などがこれに該当しますので注意しましょう。

国に返すことができる土地

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いらない土地を国に返すことができるのは、法令で定められている「国に返すことができない要件」のいずれにも当てはまらないことが必須です。

いらない土地の管理や処分に多額の費用がかかったり、国が有効活用できると判断できない土地に関しては、国に返すことができないのです。「いらないから手放したい!」と思っても、この要件によって返すことはできないので、国に返すことを検討している方は是非ご覧ください。

申請できない土地の要件には、以下の2種類があります。

  • 却下要件:申請自体が認められない
  • 不承認要件:申請の段階で不承認となる

それぞれの要件に該当していないか、照らし合わせましょう。

【却下要件】

  • 建物が建っている
  • 担保権とまたは使用収益権が設定されている
  • 所有者以外の人の利用が予定されている
  • 土壌汚染されている
  • 境界の不明瞭などによる所有権の争いがある

【不承認要件】

  • 勾配30度以上かつ高さ5m以上の崖地がある土地のうち、管理に多くの費用・労力を要するもの
  • 管理・処分を阻害する有体物が地上にある
  • 管理・処分のために、撤去が必要な有体物が地下にある
  • 隣接した建物の所有者と争訟しなければ管理と処分ができない
  • その他、管理・処分にあたり多くの費用や労力を要する

要件を満たしていれば、相続人がいらないと感じていた農地や山林の所有権も国に返すことができます。

負担金について

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いらない土地を国に返すにあたり、審査手数料として1筆当たり14,000円を国に納付する必要があります。

納付後は申請の取り下げや審査で却下あるいは不承認であっても、審査手数料を返すことはできないためご注意ください。

そして、法務局による審査で承認されると、宅地や田畑、森林など土地の種目に応じた負担金の支払いが必要です。 負担金は10年分の標準的な管理費用額を考慮し算出します。

例えば、いらない宅地や田畑を国に返す際の負担金は、面積に関わらず原則200,000円となります。ただし、市街化区域や国から用途が指定されている地域は、面積によって負担金が変わるので注意が必要です。

負担金の算定基準の詳細は、法務省のサイトに掲載されています。同サイト内にある負担金額の自動計算シートも使うと、より詳細な金額がわかりますので、気になる人は確認をしてみてください。

「相続土地国庫帰属制度」の手続きの流れ

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手続きの窓口は、管理している都道府県の法務局あるいは地方法務局で、申請は窓口か郵送のいずれかで行います。

手続きの流れは次のとおりです。

  • 相続人からの承認申請・審査手数料の納付
    申請にあたっては、必要書類の提出とあわせて、審査手数料を国に納付します。
    必要書類については後述しますのでご確認ください。
  • 審査
    審査手数料を納付し必要書類が受理されると、法務局の担当官による書類審査が行われます。また、場合によっては実地調査が必要となるケースもあります。
  • 承認
    審査で承認されると、通知が申請者のもとに届きます。
  • 負担金の納付
    申請者は通知書に記載された負担金を国に納付します。通知が届いたら30日以内に負担金を支払う必要があります。
  • 国による管理開始
    納付された時点から、いらない土地を所有する権利が国となります。

必要な書類について

申請にあたっては、承認申請書以外にも必要な書類が複数あります。

  • すべての申請者が添付必須の書面(5点)
  • 遺贈によって土地を取得した相続人が添付必須の書面
  • 承認申請者と所有権登記名義人が異なる場合に添付必須の書面
  • 任意で添付する書面

詳しくは、法務局のサイトや窓口にてご確認ください。

これらの必要書類を手配するには手間がかかりますし、書類には専門用語が多く使われていますので、自分で書類を準備するのはとても大変な作業になるはずです。

必要書類の手配が困難な場合は、弁護士や司法書士、行政書士に相談し、書類を代行して作成してもらうことをおすすめします。

相続土地国庫帰属制度以外の土地の手放す方法とは

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相続土地国庫帰属制度以外にいらない土地を手放す方法はあります。

具体的な選択肢は以下のとおりです。

  • 相続をしない(相続放棄)
  • いらない土地を寄付する
  • いらない土地を売却をする

いらない土地を所有し続けるより、いらないなら国に返すよりも手放してしまったほうが将来的にメリットがあるかもしれません。

要件が合わず相続土地国庫帰属制度を利用できず、国に返すことができない場合には、ぜひ参考になさってください。

相続をしない(相続放棄)

相続をしない、つまり相続放棄をすることで、「いらない土地をそもそも受け継がない」という選択肢があります。

いらない土地を所有し続けると固定資産税などの負担が発生しますが、それらの支払いをしなくても済むので余計な出費を抑えられます。

ただし、相続放棄の注意すべき点は、相続放棄はすべての財産を放棄することになります。つまり、いらないものだけでなく、預貯金や株式などのように自分が必要としている財産もすべて手放すことになります。

したがって、相続したい財産がある場合には、相続放棄以外の選択肢を検討することをおすすめいたします。

土地を寄付する

いらない土地を自治体や法人に寄付することもできます。自治体に寄付する場合は、自治体に手続きの流れや必要書類について問い合わせてみましょう。

ただし、自治体に寄付できない場合もありますので注意が必要です。いらない土地を自治体に寄付することは、自治体にとって固定資産税という大きな収入源が減ってしまうことになります。自治体が有効活用できると判断できる土地であることがポイントといえるでしょう。

また、法人に寄付する場合は、寄付先の法人が営利法人(一般的な企業)か公益法人(学校やNPO法人のような公益性の高い法人)かによって取り扱いが異なります。

営利法人に寄付する場合、寄付した側が譲渡所得税を支払う場合があります。一方、公益法人への寄付については、社会貢献とみなされて譲渡所得税が免除になります(免除を受けるには手続きが必要です)。

売却をする

これまでいらない土地を売却できなかった経験のある人も、改めて売却を考えてみるのはいかがでしょうか。いらないなら、いっそのこと売却価格を下げてみたり、売却の方法を見直したりすることも方法のひとつです。

相続土地国庫帰属制度の利用や寄付などを検討した人であれば、以前よりも売却価格を下げることへの抵抗は小さいのではないでしょうか。

また、不動産会社が仲介して買い手を見つける方法のほか、不動産会社に買い取ってもらう方法もあります。

不動産会社は経験や知識が豊富なプロですので、いらない不動産でお困りになりましたら、複数の不動産会社に相談しながらアドバイスをもらうと良いでしょう。

もし不動産会社から売却をお断りされ、売却先にお悩みの方は次の記事もあわせてご覧ください。
どんな不動産でも買取可能な不動産会社について紹介!

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今回は、いらない土地を国に返す相続土地国庫帰属制度の内容と、この制度を利用できない場合のいらない土地を手放す方法(国に返す以外の方法)について解説しました。

「相続したものの、管理できないしいらないから手放したい」と考える方は少なくありません。令和5年に誕生した制度「相続土地国庫帰属制度」は、いらない土地を国に返す制度で、「いらない土地のみ」を国に返すことができる制度です。

「いらないのでどうにかしたい!」という場合には、制度の詳細を確認し、国に返す選択肢について検討されてみてはいかがでしょうか。

あきやの未来は不動産の売却だけでなく買取も行っています。

当社は茨城県西エリアの地域に密着した不動産会社です。不動産の取り扱い実績が豊富ですので、お客様のお困り事にも親身に寄り添いながら、適切なアドバイスをさせていただきます。

制度を利用できず、国に返すことができない場合(建物がある場合など)もご相談いただける可能性がございます。

いらない土地を国に返すことができず他の方法をお探しでしたら、あきやの未来(常総店・筑西店・坂東店・桜川店・つくば店)までお気軽にお問い合わせください。