不動産の生前贈与!メリット・デメリットや手続き手順も分かりやすく解説

2024年3月30日

不動産 生前贈与 メリットデメリット

【不動産】生前贈与のメリット・デメリットは?相続よりおすすめな理由

不動産の生前贈与のメリット・デメリットと、生前贈与が相続よりおすすめな理由をご紹介します。

●生前贈与のメリット1.条件によって節税効果が期待できる

不動産の価値が将来的な上昇を見込める場合、例えば、交通網の整備や複合商業施設の展開、その他立地上の利便性などが大きく向上する場合ですが、こういった不動産は生前より相続の時点の方が評価額が高くなっている可能性があることが生前贈与のメリットです。
後々、周辺の開発が予定されているなどの情報があるのでしたら、上がる前の評価額が低めの時点で生前贈与をしてしまった方が税金の負担を抑えられるメリットがあります。

相続の場合は相続税が、贈与の場合も贈与税という税が課税されますが、一般的には贈与税の方が高い税率設定となっております。不動産を所有した際に発生する不動産取得税なども、相続の場合より贈与の方が高めに税率が設定されています。そのため、どのような不動産でも生前贈与の方が節税効果メリットを得られる、という訳ではありませんのでご注意ください。

後述しますが、「相続時精算課税制度」など、メリットとして生前贈与の贈与税について、受けられる控除の制度もいくつかございます。

●生前贈与のメリット2.予めどの不動産を誰に譲り渡すかなど、贈与者の意思を尊重できる

相続は被相続人の死亡から開始されるため、突発的な死因の場合は、遺言書ない等の理由で相続人同士でのトラブルが発生しやすいのですが、生前贈与であれば贈与者本人の意向に従って財産を予め譲り渡すことができますので、相続のような揉め事が起きにくい、というメリットがあります。
特に、不動産は物理的に分割ができず、もし分割をするのであれば共有持分として○分の1ずつ所有する、など、登記上の煩わしさも伴いますから、生前贈与の形で贈与者本人と贈与を受ける側である受贈者と話し合いをして、平和的に財産の譲り渡しができるのは、生前贈与の大きなメリットと言えます。

生前贈与のデメリットや注意点は?

生前贈与のデメリットや注意点は、贈与税がかかり、これが相続税よりも高い税率が設定されている点です。しかし控除等により節税は可能です。他にもデメリットとして所有権移転登記のための登録免許税がかかることがあげられます。所有権移転登記のための登録免許税は、どちら側が支払うかの決まりがありませんが、生前贈与を受ける側が支払うことが一般的といわれています。
また、生前贈与を受けた後でも相続税の支払いが加算される可能性があります。生前贈与後に元の所有者が無くなった場合、亡くなる前7年間(2023年度税制改正による)に贈与された財産は相続税の対象となってしまうからです。

不動産 生前贈与 負担

不動産を生前贈与する場合の手続きを詳しく解説!

不動産を生前贈与する場合の手続きを詳しく解説します。

●1.不動産贈与契約書の作成

相続は遺言書がないと被相続人の意思が反映されませんが、生前贈与であれば口頭の約束だけでも効力を発揮します。ただ、口約束は言った・言わないのトラブルを生みやすいのも事実。事後的なトラブル回避のために、必ず「不動産贈与契約書」を作成し、生前贈与を行うことを強くオススメします。

不動産の贈与契約書の記載内容は、以下の項目をご参考ください。

  • 贈与者・受贈者(贈与を受ける側)のそれぞれの氏名
  • 贈与の目的となる不動産
  • 不動産登記手続きにかかる費用の負担者

当事者それぞれが、自筆で署名・捺印(実印)をすることで、法的な効力が生じます。

贈与契約書を正式に取り交わしたのちは、取り消すことができませんので、記載内容などに誤りがないか念入りに確認をしておきましょう。受贈者側も、贈与を受ける旨を承諾をする前提で書類を取り交わしてください。

●2.不動産の名義変更手続き

贈与契約書の取り交わしが終わり、正式に贈与契約が締結されましたら、贈与の対象となる不動産の、所有権移転登記の手続き、いわゆる名義変更手続きをしてください。必要書類や収入印紙を用意して、管轄の法務局へ提出するのですが、一般的には司法書士に頼むのが手堅い方法です。

贈与者は登記識別情報や発行から3ヶ月以内の印鑑証明書、固定資産評価証明書など、受贈者は住民票や登記原因証明情報(この場合は前述の贈与契約書を指します)などが必要書類の中身となりますが、司法書士に依頼すれば一通りの説明をしてもらえます。一口に司法書士と言っても、事務所によって専門分野に違いがある可能性もありますので、いきなり司法書士事務所の門戸を叩くのに抵抗があるようでしたら、手近な不動産業者に相談するのがオススメです。売買に強い不動産業者であれば、懇意にしている司法書士がいるはずですし、贈与対象の不動産の運用などについてのアドバイスももらえるかもしれません。

また、法務局に提出するだけでは名義変更、つまり所有権移転登記は完了とはならず、必ず登記手続きにかかる費用が発生しますのでその支払いも済ませなければなりません。

所有権移転登記時に発生する費用は、登録免許税と言いまして、贈与の対象となる不動産評価額の2%と定められています。登録免許税額分の収入印紙を購入して、登記申請書の必要箇所に貼付して提出する形で納付ができます。

贈与の場合では登録免許税は2%ですが、相続の場合は不動産評価額の0.4%と、税率に差がありますのでご注意ください。

●3.不動産取得税及び贈与税の申告

受贈者は、贈与を受けた年の翌年2月16日~3月15日の期間内に、確定申告をして、不動産取得税・贈与税の申告・納付をしなければなりません。

不動産取得税の税率ですが、贈与を原因とする不動産取得の場合は、その不動産の固定資産税評価額3%となります。住居ではない建物の場合は4%となりますので予めご注意ください。

※2021年3月31日までに取得した不動産については、固定資産税評価額の2分の1対して不動産取得税が課税される、という特例もありますので、いつ贈与を受けたかについても再度確認しておくべきでしょう。

ちなみに、相続を原因とする不動産取得の場合は、不動産取得税は課税されず、登録免許税同様、贈与の方が負担が高くなる要素の一つとなっています。

贈与税の税率に関しては、やや複雑に設定されていますので、以下の説明内容をご参考ください。

まず、贈与を受けた財産の合計額から、税金のかからない範囲である基礎控除額の110万円を引きます。引いた後の額が、「課税価格」となります。この課税価格がいくらかによって、基礎控除以外の控除額と税率が決定します。

以下に、国税庁webサイト掲載の、贈与税の速算表を引用した表を掲載いたしますのでご参照ください。

【一般贈与財産用】(一般税率)

基礎控除後の課税価格 200万円

以下

300万円

以下

400万円

以下

600万円

以下

1000万円

以下

1500万円

以下

3000万円

以下

3000万円超
税 率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 10万円 25万円 65万円 125万円 175万円 250万円 400万円

【特例贈与財産】(特例税率)

基礎控除後の課税価格 200万円

以下

400万円

以下

600万円

以下

1000万円以下 1500万円

以下

3000万円

以下

4500万円

以下

4500万円

税 率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 10万円 30万円 90万円 190万円 265万円 415万円 640万円

直系尊属(祖父母や父母など)から、二十歳以上の者が贈与を受ける場合は、特例贈与財産に該当しますので、特例税率を適用することができます。

例外もあるため、ひと括りには言えませんが、相対的に相続税と比較して贈与税の方が高めになっています。

生前贈与時に課税される贈与税で受けられる控除は?

生前贈与時に課税される贈与税で受けられる控除について解説します。

●1.相続時精算課税制度

60歳以上の親や祖父母が、20歳以上の子や孫へ生前贈与をする時に選択できるのが、この相続時精算課税制度です。この制度を利用する、という選択をすると、贈与目的の財産の総額が2,500万円まで贈与税がかからなくなるメリットがあります。2,500万円を超過した分に対しては、一律で20%の贈与税が課税されます。

この制度はその名の通り、相続時に免除された贈与税分を組み込んで精算をしなければなりませんので、簡単に申し上げますと税金の支払いの先送り、のような制度と捉えることもでき、節税ができるメリット、と言ってしまうと語弊があるかもしれません。

相続時精算課税制度の利用を選択すると、後々の贈与分に対してもこの制度が適用されますし、2,500万円というのは生涯で贈与を受けた財産の累計という考え方ですので、制度利用をすることでデメリットとなってしまう方も少なくありません。

将来的に相続税がかからない見通しが高い方や、相続税が小額で済みそうな方であれば、この相続時精算課税制度を選択するメリットがございます。

後から変更は効かない部分ですので、相続時精算課税制度の方がお得か否かは、念入りに調べてから判断をしてください。税理士などに相談するのも一案です。

●2.基礎控除額110万円

贈与税には基礎控除があり、毎年適用されます。年間で贈与を受けた財産の合計が110万円未満であれば、贈与税自体が課税されません。110万円を超えた分、つまり贈与財産の価額から110万円を引いた額が課税価格となる訳です。土地や建物などの不動産となると、110万円未満というケースは稀かと思われますが、それ以外の動産であれば対象となる可能性も有りえますよね。

上記●1でご消化した、相続時精算課税制度を選択した場合は、その後の全期間、110万円の基礎控除を受けることができなくなりますので要注意です。

●3.配偶者控除

婚姻期間20年以上の夫婦間で、居住用不動産(または居住用不動産を取得するための金銭)の贈与の場合は、基礎控除である110万円の他に、最大で2,000万円までの「配偶者控除」を受けることができます。配偶者間における居住用不動産の贈与については、基礎控除110万円に加え最大2,000万円まで控除されます。同一配偶者からの贈与について、一生に一度のみ受けられます。

メリット豊富な生前贈与で円満な終活がおすすめ

メリット豊富な生前贈与で円満に終活をされることをおすすめしています。
ご紹介した通り生前贈与の贈与税は控除で節税効果も期待できるメリットがあります。死亡と同時にはじまる「相続」と違い、「生前贈与」は生きている間に誰にどの財産を譲り渡すかを、贈与者本人と受贈者との間で話し合いができる、という大きなメリットの他に、評価額が将来的に上がってしまい相続時に税負担が高額になる可能性のある不動産も早めに所有権移転ができるため、節税効果というメリットも期待できます。

相続の場合は相続税、生前贈与の場合は贈与税、とどちらにしても税金が課税されます。贈与税の方が相続税より税率が高く設定されてることがデメリットですが、相続時精算課税制度や配偶者控除なども活用することで節税が可能なメリットがあります。

不動産を生前贈与する場合は、言った言わないのトラブル回避のため、親しい親族間と言えども必ず贈与契約書の作成をオススメします。

贈与を受けたら、名義変更(所有権移転登記)の手続きや、不動産取得税・贈与税の申告も忘れずに。

不動産は相続時の揉め事が多い財産の代表格です。

相続人がひとりなら話は別ですが、法定相続人が複数人いる場合は遺言書がないと、不動産の財産分与で話し合いが長引いたり、仲の良かった親族間の関係に亀裂が入る、なんてこともしばしば起こりえます。こういった心配事を危惧しないで済むのが生前贈与、という訳ですね。